というのが典型的な受傷機転エピソードです。
これは
肘内障(ちゅうないしょう)
と呼ばれ、
2〜6歳の子どもに多く見られる肘のケガです。
俗に「腕が抜けた」と言います。
肘の骨が靱帯からはずれそうになるのが原因です。
(医学的には、「橈骨頭(とうこっとう)」が「輪状靱帯(りんじょうじんたい)」から「亜脱臼(あだっきゅう)」する、といいます。)
ポイント 肘内障(ちゅうないしょう)
なぜ、肘内障は子どもに生じやすいのでしょうか?
子どものほうが大人よりも橈骨頭が小さい(=未発達)ためです。 肘内障はいわゆる肘の亜脱臼になりますので、何度も繰り返すことがあります。
子どもは腕をだらんと下げて動かそうとしないことが多いです。腕を下げている方が痛くないからです。バンザイができず、患肢を触ろうとすると嫌がります。
注意 内出血、腫れ、変形がある場合は骨折を疑いますので、その場合はすぐに整形外科を受診しましょう。
肘内障であれば以下の手順で整復します。
「亜脱臼なんだったら引っぱればいいんじゃないの?」
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。下記の回内法をまず試してみてください。
難しそうであれば無理をせずに整形外科を受診しましょう。
■ STEP 1
橈骨頭を指で軽く圧迫しましょう。肘を両側から摘まむ感じです。
■ STEP 2: 回内法
前腕を回内(赤矢印の方向)します。つまり、患児の手のひらを内側に向ける方向にまわします。
★この段階で容易に整復されることが多いです。整復されると①の指に整復音(クリック音)を感じます。
★整復に力は全くいりません!患児をリラックスさせながらゆっくりとさりげなく整復するのがポイントです。
■ STEP 3:回外屈曲法
STEP2の回内法で整復されなければ…
回外(患児の手のひらを外側に向ける)した状態で肘を曲げます。
★整復されると①の指に整復音(クリック音)を感じます。
■ STEP 4
患肢を挙上(バンザイ)させます。
★ ぬいぐるみやスマホなどを患児の頭の上にもっていってとらせるようにするとよいです。
■ 整復後
肘内障は整復されると痛みがなくなります。
痛みが続くようであれば整形外科を受診しましょう。
親御さんから
とよく聞かれますが、
5〜6歳以降に橈骨頭がしっかりしてくると外れづらくなりますよ。