顎がはずれた = 顎関節脱臼(がくかんせつだっきゅう)と呼ばれます。
大きな開口時(あくび、大笑い、歯科処置など)に生じます。
一般的には若い人に多いのですが、脳梗塞・脳出血後、Parkinson病、心因性でも生じます。
下顎が前にずれるタイプが圧倒的に多く、既往のある人では何度も繰り返しやすいです(習慣性脱臼)。
患者さんは痛みがあり、口を閉じることができないため、よだれが垂れ流しになり、会話やのみこみが困難になります。
顎が外れたときの治し方
【Hippocrates法】
- 1番オーソドックスなHippocrates(ヒポクラテス)法(徒手整復の一種)を紹介します。本法は一般の人がやるにはやや難易度が高いため、難しいと思ったら無理をせずに、病院受診をしたほうがよいです。
- 患者さんは座位でも臥位でもよいですが、後頭部が後に下がらないようにするための"支え"(背もたれや枕)があったほうがやりやすいです
- 術者は手袋を装着したうえで、親指を患者の奥歯に置き、残りの4指で下顎を把持します(下の写真)。
ポイント
①下顎全体を下方にゆっくりと下げて(これで関節が緩みます)、
②親指は下方向の力を加えつつ、残り4本の指で前歯部を持ち上げて、
③下顎全体を後方に押し込みます
→うまくいくとゴリッという下顎頭が関節結節を乗り越える感触が得られます。
★脱臼整復全般にいえることですが、関節を緩めるために患者さんをリラックスさせながらゆっくりと整復することがコツです。
★患者さんに、②〜③にかけて軽く噛む動作をしてもらうと整復がしやすくなります(術者の親指を噛まないように伝えながら!)。
★コミニュケーションがとれない患者さんの場合は、本法は指を噛まれる可能性があり危険なため、病院受診をおすすめします。歯科口腔外科や形成外科が担当科になります。
【GONAI法】
その他、東戸塚記念病院の郷内志朗先生が考案した、顎関節脱臼の自己整復法も有用です。